徳島視整体研究所

当店では「見る」ことから目の使い方を整え、身体の健康の維持や改善のアプローチをしています。1級眼鏡作製技能士

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子どもの目の健康を守る…斜視・弱視を早期発見するためには

乳幼児期や学童期…二度と獲得できない機能

子どもの目の健康を守る…斜視・弱視を早期発見するためには

 私は小学校の校医、認定こども園の園医を15年以上務めています。そこでの最も大切な役割は、斜視や弱視(眼鏡をかけても視力が出にくい状態)の発見だと思っています。

 それは、乳幼児期や学童期が、ものを見る「視機能」の発達にとって重要な時期だからです。視力や、両目で見て距離や奥行きを測定する「両眼視」機能は、この時期に急速に育ちます。この時を逃すと、二度と獲得できないのです。距離や奥行きを測定する感覚は、両方の目が必要です。3歳児健診が特に重視されるのは、こうした理由があるからです。

 小学校、こども園での検査は、次年度に就学・就園する子どもを含めた全員を対象にします。まず養護教諭らが大体の視力を測定するので、眼科医としての私は、目の位置のずれがないかどうかに最も注意しながら、一人一人をチェックします。

 一般に「斜視」と聞くと、明らかに目の位置がずれた外見を思い浮かべるでしょう。しかし、1回見ただけではわからない潜伏(隠れ)斜視もあり、慎重に確認しなければなりません。また、子どもが自然と首を曲げて位置のズレを修正している「眼性 斜頸しゃけい 」のケースもあるので、その点にも注意します。

1学級に1人程度…1秒で「斜視」判定

 ところで、小児の斜視はどのくらいの頻度で発生していると思いますか。

 日本人の頻度を正確に調べた研究はありません。両眼視機能が不十分なものを斜視とすると、人口の30%近くいる、とする意見があります。

 ただ、世界的には、各国に2~3%前後とする研究が多いようです。これだと、1学級に1人程度になります。

 日本には、眼科の学校医が配置されていない地域がまだ多くあります。たとえ配置されていたとしても、必ずしも斜視や小児眼科を専門とする医師とは限りません。

 そこで、非常に進化した最新機器の助けを借りることが、斜視や弱視を早く見つけるための有力な選択肢となってきます。

 例えば、米国生まれの「ビジョンスクリーナー」というコンパクトな機器は、約1メートル先から画面をのぞきこむと、わずか1秒で、近視や遠視などの両目の屈折や、斜視、瞳孔の検査ができる優れものです。小児科医でも扱える可能性があり、既に導入している自治体もあるそうで、今後利用が広がることを期待しています。

機能改善の訓練も…最新機器の導入検討を

 別の機器も登場しています。昨秋に開かれた日本神経眼科学会のセミナーで、「ORTe(オルテ)」と命名された日本生まれの斜視関連検査機器について、開発の経緯や、使用した際の経験について聞きました。

 眼科での検査の多くは片目ずつ行いますが、この機器は「両眼開放視」という自然な見え方に近い形で、視力だけではなく、両眼視の中でも奥行や距離感を認識する高度な機能「立体視」も測定できます。機能改善の訓練も実施できるほど進化しています。

 こども園、学校、各眼科がこの機械をそろえるのは、コスト面などから難しいかもしれません。しかし、自治体の拠点となる保健センターや、病院・医院などに設置して、地域の子どもたちに眼病の疑いがあるかどうかを調べる検査に利用できれば、理想的です。

 次代の日本を担う子どもたちの目の健康は、日本全体にとっても重要な課題のはずです。「オルテ」は一度導入すれば20年は使えるので、この課題に取り組む意欲のある自治体は、ぜひ検討してほしいと思います。

 

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