徳島視整体研究所

当店では「見る」ことから目の使い方を整え、身体の健康の維持や改善のアプローチをしています。1級眼鏡作製技能士

ネット記事

芥川龍之介も経験 片頭痛の前兆で視野の一部がギラギラ

小説では「歯車」と表現 「閃輝暗点」現象 

 片頭痛が視覚や眼に関係することがあるというお話をします。

 片頭痛の視覚の現象で有名なのは、難しい言葉ですが、「 閃輝暗点(せんきあんてん) 」と呼ばれるものです。片頭痛の15%程度を占める「前兆のある片頭痛」(頭痛国際分類)の前兆として出現するもので、視界の一部にギラギラ輝くもの(閃輝)が出現し、次第に視野の周辺部に拡大してゆきます。その形は中世の城壁のようだと教科書に書かれています。芥川龍之介も自身が何度も経験していて、遺作の題名「歯車」は、まさに閃輝暗点を表現したものです。

 2020年東京オリンピックパラリンピックのエンブレムが、閃輝暗点が大きくなった時の形にそっくりだと、片頭痛患者から聞いたこともあります。

 この閃輝は、両目でも片目でも見え、目をつぶっても自覚でき、閃輝のある視野部分は閃輝に隠れて見えないので暗点と称します。

20分ほどで視野が晴れ、頭痛が始まる

 この視覚の症状はたいてい20分ほどで収まり、視野全体が晴れてくると、今度は頭痛、主として脈打つような痛みが出てくるというのが、「前兆のある片頭痛」の典型的な時間経過です。

 頭痛自体はだれにでも起こることなので患者は比較的慣れており、休んだり、頭痛薬を利用してしのいだりしているようですが、閃輝暗点を初めて経験した人は、びっくりして眼科を訪れることがあります。

目の症状のみの「頭痛がない片頭痛」の場合も

 ところで、閃輝暗点だけで頭痛が生じない「典型的前兆のみで頭痛を伴わないもの」と国際頭痛分類で呼ばれているものもあります。以前は、これを「頭痛のない片頭痛」などと呼んでいたこともあります。

 はじめから頭痛をほとんど経験せず、閃輝暗点だけが出現するタイプもありますが、私が外来でよくみるのは、閉経期をすぎた高年女性の閃輝暗点です。

 若い時には片頭痛と思われる発作が時々起こっていたという人もいます。片頭痛自体は、通常若い時には頻発しますが、閉経後は明らかに減るものです。ところが、閃輝暗点だけが残ったり、片頭痛が「頭痛のない片頭痛」である閃輝暗点に変化したりしたものではないかと思われます。

視野欠損なら片頭痛と無関係な脳や目の疾患の可能性

 あまり頻回に生ずる場合は、頭部MRI(磁気共鳴画像)を検査したり、神経内科などで器質的疾患を探してもらうこともありますが、いまだかつて脳内病変が見つかった人はいません。

 いずれにせよ、閃輝暗点は、昔からよく知られている典型的な視覚陽性現象(視野に邪魔者が出現する場合を陽性現象という)です。

 片頭痛とは無関係で、むしろ脳や目の疾患の予備軍の可能性を考えなければいけないのは、視覚陰性現象のほうです。

 たとえば、急に片目の下半分の視野が欠損するとか、視野全体が真っ暗になる(濃い紫色に暗くなると表現した方もいます)というように、視野の中が光るのでなく、暗くみえない部分(つまり陰性部分)が出現する場合です。一過性(数秒から数分)のもので、元に戻ることが多いですが、時間が長くなるのは、その間、必要な循環が低下している可能性を示唆しますので、注意信号の症状です。(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

yomidr.yomiuri.co.jp