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米ニューヨーク大学の研究チームは9日、事故で顔の半分が大きく損傷した男性患者に眼球を丸ごと移植する初の手術を実施したと発表した。視力を改善させるための角膜移植は普及しているが、これまで眼球全体を移植した報告例はなかった。
発表によると、患者は46歳の男性。2021年に仕事中に高圧線で感電し、顔を含む上半身の左半分を大きく損傷した。手術は今年5月に行われ、30代のドナーから提供された左目の眼球と顔面の一部を同時に移植した。視神経を再生させる目的で、さまざまな組織の元になる幹細胞も同時に移植していた。
手術から半年がたち、移植した左目の網膜に血流があるなど健常な状況が示唆される一方、脳とつなぐ神経が途切れたままとみられ左目に視力はないという。移植を担当した医師は「当初の目標は、(移植した)眼球を少なくとも90日間生かすことだった。期待をはるかに超えている」と述べ、新たな可能性を開く成果だと強調した。
男性は右目の視力は維持している。今年7月に退院して復職も検討しているといい、大学を通じて「人生を変えてくれた」と感謝の言葉を伝えている。【ニューヨーク八田浩輔】